マルキーズ・デ・ミュール |ヤギと娘とブラックベリー
Marquise des Mûres(マルキーズ・デ・ミュール)

南仏サン=シニアンの丘の上、ジャン=ジャック・マイアック氏が営む小さな自然派ワイナリー、それが「マルキーズ・デ・ミュール」です。
この名前には、ブドウ畑にまつわる素朴な物語が込められています。かつてこの地では、羊飼いの娘たちがヤギを連れて畑の境界や溝を掃除していました。娘たちの楽しみは、その周りに育つブラックベリー(フランス語で“ミュール”)を少しだけ摘むこと。ところが、ヤギたちはその実が大好物。娘たちの分は、ほとんど残りませんでした――。
そんな懐かしく素朴な情景から、「マルキーズ(羊飼いの娘たち)・デ・ミュール(ブラックベリー)」という名が生まれました。
ワイナリーは12haの畑を持ち、1980年からジャン=ジャック氏が5代目として運営。1992年には初の瓶詰めを行いました。2006年からは有機栽培を実施し、自然のままの環境を尊重する農法を採用。雑草も刈らず、選果しながらすべて手摘みで収穫しています。
醸造でも“素のままのワイン”を追求し、土着酵母を使い、亜硫酸は極力使わずに醸しています(一部ワインでは完全無添加)。ワインの個性に応じて、マセラシオン・カルボニックと伝統的醸造法を使い分けています。
「マルキーズ・デ・ミュール」のボトルには、あの羊飼いの娘たちが今も静かに描かれています。

原産地呼称:AOP Saint-Chinian(サン=シニアン)
所有者:Jean-Jacques Mailhac(ジャン=ジャック・マイアック)
総畑面積:12ha
総生産量:約32,000本
歴史と由来
ジャン=ジャック氏の家系は代々ブドウ栽培を営んでおり、彼は5代目。1980年から経営に携わり、1992年に初めて瓶詰めワイン「マルキーズ・デ・ミュール」をリリースしました。
“マルキーズ”は、かつてブドウ畑の溝を掃除するためにヤギを連れて来た羊飼いの娘たちを意味し、“ミュール”はブラックベリーのこと。ヤギの大好物だったため、娘たちの分はほとんど残らなかったというエピソードに由来します。
地理と土壌
南フランス・ベジエの北、サン=シニアンのアペラシオン内に位置し、小石混じりのシスト土壌でブドウを育てています。
栽培と収穫
2006年より有機栽培を実施。雑草も刈らず、自然なままの環境を活かした栽培を行っています。収穫は選果しながらすべて手摘みで行われます。

醸造と哲学
ワイン造りの基本方針は「可能な限り亜硫酸を加えない」こと。特にルー・カリニャンやサンソーは土着酵母を用い、無添加または極少量の添加に留めています。2022年ヴィンテージの「レトワール・ド・ナンス」シリーズも無添加の可能性が高いです。
醸造法は、ワインによってマセラシオン・カルボニック(炭酸ガス浸漬法)と伝統的醸造を使い分けています。
栽培品種
- Syrah(シラー)
- Carignan(カリニャン)
- Grenache(グルナッシュ)
- Cinsault(サンソー)
- Nielluciu(ニエルチウ、ニエルッチョ)※輸入した品種を自家栽培
ラベルの特徴
「メティス」「レ・サーニュ」「ナサーラ」などのラベルには、マルキーズ(羊飼いの娘)のイラストが描かれています。